本日:
昨日:
URL:http://psychology.jugem.cc/
管理人:浅野教授 neko_colum@hotmail.com
「いんちき」掲示板
 虚構はしょせん虚構に過ぎない。だが虚構を求める人々の心は「真実」だ


 
スポンサーサイト (2015.08.09 Sunday) [-]

一定期間更新がないため広告を表示しています

 この記事へのリンク|-|-

 
『正しい統計データ』を使ってウソをつく方法 (2004.08.19 Thursday) [いんちき心理学講義]
 ●少年の強盗件数が急増している
 まず、少年の強盗検挙件数のデータを見てみましょう。

少年の強盗件数


 この統計データから分かることは、20年以上も横ばいだった強盗件数が近年になって、一気に急増したということです。
 昨今の少年は凶悪な殺人を犯さなくなりましたが、その代わりに実利目的の強盗へとシフトしました。これは「お金こそ全て」という価値観が大人だけではなく少年たちにまで広がり、その結果貧しい心を持つ少年たちが金銭を得るために強盗を行うという短絡的な行動をするようになったのです。これは、学校が知識偏重の詰め込み教育をし、心の教育をないがしろにした結果と言えるでしょう。

 何しろ、1996年では1082件だった強盗件数は1997年に1701件と何と1.7倍になっているのです。
 この一年だけ急増したのならば一過性の流行と考えられるかもしれませんが、図を見れば分かるとおり1997年から2003年に至るまで高い水準のまま推移しています。つまり、これは一過性の流行ではなく、少年たちの間で強盗が当然のことのように認知されたことを意味するのでしょう。

 ところで、このグラフを見て疑問に思った人はいませんか?いくらなんでも1.7倍の件数に増えて、しかもそのまま推移しているなんて不自然じゃないかと。
 実はこのグラフにはいんちきが潜んでいるのです。もちろん、このグラフは警察庁の統計データから出された公式なものであり、数字自体がおかしいわけではありません。このデータのいんちきは違った基準で取ったデータ値が混ざっているというところです。

 まず、強盗には「強盗致傷」「強盗強姦」「強盗殺人」の3種類があります。もちろん昨今の少年が凶悪だと主張したい方々は最も凶悪な強盗殺人が増加しているのだろうと考えたくなるでしょうが、実は強盗殺人と強盗強姦はほとんど増えていません。近年になって激増しているのは強盗致傷なのです。

 このあたりでピンとくる人もいるかもしれません。実は、犯罪統計で強盗が増加したのは、警察の方針が犯罪に対して強硬姿勢を取るようになったからなのです。

 かつては、少年が窃盗を行った後に被害者に暴行を加えると、窃盗及び傷害の容疑で逮捕されていました。しかし1997年6月に全国警察少年担当課会議で関口警察庁長官(当時)が「悪質な非行には厳正に対処、補導を含む強い姿勢で挑む」と発言し、警察庁はそれを受け8月に「少年非行総合対策推進要綱」を制定し、少年犯罪の取調べを強化しました。その結果、今まで窃盗及び傷害として検挙されていた少年たちが強盗致傷として検挙されるようになったのです。

 元家裁調査官・寺尾史子氏はCDを万引きした少女が逃げる時に店員を突き飛ばしたというだけで強盗致傷として検挙するようになったということを指摘しています。
 この取り締まり強化が行われたのが1997年で、強盗件数の数字が増加しているのが1997年なのですから、そこに関連があるのは明らかでしょう。統計データは確かに正しいかもしれません。しかし、その数字が生まれた背景にまで目を通さなければ、いくらでも間違った結論を導き出せるのです。

 1997年以降、本当は少年の犯罪件数は増えていなかったのに、「若者は凶悪だから」と取締りを強化したせいで普通の人々ならば「凶悪犯罪」と考えないような犯罪までも凶悪犯罪に含まれるようになりました。
 その結果犯罪件数が増えたのに、それを考えにいれず「ほら犯罪件数が増えているのだから若者は凶悪になっている証拠だ」と言っているのですから、かなり性質が悪いと言えます。

 なんだか自己成就型予言みたいですね。自己成就型予言とは、「このようになるだろう」という考えを持った人が無意識にその通りに行動した結果、予言が実現するというものです。例えば、「お前は反抗的な目をしている」と言われて教師から無下にされ、それに不満を持って反抗をしたら「ほらやっぱり反抗的な奴だった」と言われるということが自己成就型予言に当たります。

 なお、このデータは1975年までのものですが戦後全てのデータを掲載するとこうなります。

少年の強盗件数


 ●国民の大多数が靖国参拝は慎重になったほうがいいと考えている
 知っている人も多いでしょうが、2001年に朝日新聞が行った伝説の世論調査というものがあります。

 小泉首相が8月15日に公式に靖国神社を参拝すると表明し、日本中が大騒ぎになりました。そこで各新聞社が世論調査を行ったところ、朝日新聞以外の新聞社では、アンケート結果が反対を賛成が上回っていたのに、朝日新聞のアンケート結果だけはそれとは違った結果が得られました
 このような結果になったのは朝日新聞がアンケートに工夫を行っていたからです。

朝日新聞 2001年8月4日朝刊に発表された世論調査結果

 小泉首相は、終戦記念日の8月15日に靖国神社へ参拝すると言っています。あなたは、小泉首相が靖国神社参拝に積極的に取り組んで欲しいと思いますか。それとも、慎重にした方がよいと思いますか。
積極的に取り組んで欲しい
慎重にした方がよい
その他、答えない
26%
65%
9%

 普通、参拝するか否かという問題をアンケートするならば「賛成」「反対」という選択肢を使うものなのですが、朝日新聞は負ける戦いはしません。当時の時代の流れ的に、賛成・反対という項目でアンケートを取ると、賛成のほうが多くなると予想されました。事実、賛成・反対で世論調査を行った読売新聞では、賛成で40%で反対が34.1%と賛成が上回っています。

 単純に「賛成」と「反対」という立場がはっきりした選択肢を使わず「積極的」「慎重に」という曖昧な選択肢を使ったところに朝日新聞の独創的知性が感じられます。確かに国民の多数の人間は靖国参拝に賛成しているかもしれませんが、それは「別にそれぐらいいいじゃないか」「外国に口出しされるいわれはない」と言うものです。
 しかし、そこで「積極的に」という言葉を使うとためらいが生まれるのは当然でしょう。反対派が選べる選択肢は「慎重」か「答えない」しかありません。しかし、賛成派の場合は「積極的に参拝賛成する」という人と「参拝は賛成だが慎重にして欲しい」という2通りがいるので票はばらけます。

 そして、明らかに不自然な世論調査による結果を元に「国民は靖国参拝は慎重にするべきだと考えている」と報道するのです。反対が多いという結果は得られないが、賛成が多いなどとは死んでも報道したくない朝日新聞の巧みなテクニックを見習いましょう。

 ●国民の76%がイラク攻撃を「当然だ・やむを得ない」と考えている
 このような世論操作は朝日新聞だけの技術ではありません。日本一売れている読売新聞でも、同様のテクニックが使われています。

 2003年3月25日に、一面で「イラク戦争 政府の米支持『当然』『やむなし』76%」という記事が掲載されました。社説には「イラク戦対応 『正しい決断』と評価した世論」という記事が掲載されました。これを見る限り、読者は「国民のほとんどがイラク攻撃を正しいと思っているんだよなあ」と判断するでしょう。それが読売の狙いです。

 実はこのアンケート結果は次のようになっています。

読売新聞 2003年3月25日朝刊に発表された世論調査結果

 あなたは、日本政府がイラク問題でアメリカを支持していることについて、当然だと思いますか、やむ得ないと思いますか、それとも、納得できないと思いますか。
当然だ
やむ得ない
納得できない
答えない
12.1%
63.8%
22.3%
1.8%

 「当然だ」と答えた人はわずか1割で、大多数は「やむ得ない」という解答です。両方足せば75.9%になるので、「政府の米支持『当然』『やむなし』76%」という記事は事実であることは間違いありません。
 しかし、「当然」と「やむを得ない」には本来大きな隔たりがあり、同様に扱っていけないはずです。なぜってやむを得ないと答えた人は「本当は反対と思っている・正しくないと思っているがやむ得ない」と答えているわけですから。
 それを一つの項目としてまとめて、1割しかいない「当然」と思っている人間を大多数に見せかける読売新聞のテクニックには惚れ惚れします。

 ●グラフの書き方を変えてみる
 全く同じデータを使っているが、グラフの書き方を変えることで全く違った印象を与えることも出来ます。
 一番最初に書いた少年強盗件数について、教授は1997年からは「そのまま推移している」と書きました。しかし、これは間違っているのです。確かに上記のグラフから1997年以降を抜き出すと横ばいになっているように見えます。

 しかし、実はデータはそのままにグラフの書き方を変えると、やはり近年の少年の強盗件数が増加していることが分かるのです。このグラフを作成して教授は「ああやはり昨今の少年は凶悪化しているのだな」と悟りました。

 今まで、「少年は凶悪化していない」と何度も述べてきた教授にとって、この事実は大変ショックですが、事実は事実です。間違いは認めることが大事なのです。反省しています。データも警察庁から発表された公式なものなので、信頼性は高いと言えるでしょう。では、明らかに少年の強盗件数が急増しているグラフを見てみましょう。

近年の少年の強盗件数


  明らかに少年の強盗件数は急増している!これで少年は凶悪であって欲しいと願っている狂人識者の方々も安心ですね。2002年度ではほんの少しだけ減少しましたが、2003年度には今までにないぐらい急増していることが分かります。
 これは心の教育が足りなかっただけではなく、かつての豊かな生活のせいで我慢というものを育ててこなかったために、昨今の不況のせいで贅沢を許されなくなった少年たちが増えたせいでしょう。

 グラフと言えば必ずしも折れ線グラフだけではありません。棒グラフを使う場合もあります。ついでに、こちらでは1997年をカットして1998年からにしてみましょう。最近の少年を凶悪に思わせるためには都合の悪い古いデータなど不要なのです。

近年の少年の強盗件数

何という圧倒的な犯罪の増加率!
このグラフを見ても「少年は凶悪化していない」という人間がいるなら、その感性を疑います。


 このグラフを見れば誰でも昨今の少年が凶悪であると言うことに納得していただけると思います。これは統計的な事実なのです。少年は凶悪だということを世に知らしめましょう。




 ・・・普通に1997年も含めてグラフを書くとこうなるのはナイショです。

近年の少年の強盗件数



・朝日新聞は負ける戦いはしません。
・読売新聞はテクニシャンです。
・少年の強盗件数が増えたのは、警察庁が方針を変えたからです。
・しかし、統計グラフから判断するとやはり少年は凶悪でした。
・統計でいくらでもウソをつけます。
Check
 この記事へのリンクcomments(12)trackbacks(7)

 
スポンサーサイト (2015.08.09 Sunday) [-]
Check
 この記事へのリンク|-|-

トラックバック

統計

ぁゃιぃ(*゚ー゚)NEWS様経由で,「いんちき」心理学研究所 | 『正しい』統計データからウソをつく方法 グッジョブ!>「いんちき」心理学研究所の中の人 皆さまもご一読あれ:-)...

From Kyan's BLOG @ 2004/08/20 9:43 AM

柔道男子10歳は攻撃的。でもその後は

柔道を8歳から10歳まで習った男子は他の子供よりも攻撃的だったと言う。でも僕は長い目で見れば、柔道は攻撃性を抑制するのを学ぶ良い運動だと思う。 この論文によると、 −−−運動部(格闘技に限らず)の練習は攻撃性において悪影響がある(つまり攻撃性を抑制

From しんりの手 :psych NOTe @ 2005/02/06 12:26 PM

『正しい統計データ』を使ってウソをつく方法

*統計データを見るときに気をつけるべきこと。 欲しい結果を得るために、データを取るときの質問設定に仕掛けがある可能性。 データを取った側の思想的背景への注意。 データを取った当時の世論(←世論を知りたいためにデータを参照する場合は判断が非常に難しいとい

From 海を歩くために目を凝らす @ 2005/12/11 11:54 PM

方針を

「方針を」というキーワードでブログを検索してみました!どんな人がどんな方針を掲げているのか、また、掲げられた方針についてどう思っているのか……興味は尽きません。

From たのしい検索 ゆかいな検索 @ 2006/01/22 5:13 AM

統計でウソをつく方法

1.質問を工夫する 2.グラフの作り方を工夫する ことで堂々と可能になります(...

From スピリチュアル事始   <神殿の青空> @ 2006/04/25 10:49 PM

あなたを騙す、統計そして言い換え

統計の間違い マウスが何匹も死ぬ危ない薬です こわいですね、その薬は禁止しましょう 風邪薬を大量に飲めば人は死にます 怖いですね、風邪薬を禁止しましょう 言葉に騙され...

From 赤いスペード・黒のハート @ 2007/12/19 3:40 AM

[雑談]統計データの信頼性

「ギリシャは信用できず」=統計修正で異例の批判−欧州委(時事通信) ギリシャの財政赤字に関する統計が大幅に修正されたそうです。 統計データの信頼性は、統計を元に分析をする人に取っては大問題です。公的機関が発表している統計は、設問の設定や標本の抽出など

From 数字を読むブログ @ 2010/01/17 3:30 PM