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「臨死体験は死後の世界の証明」という神話 (2004.07.09 Friday) [セコい神話]
 ●二つの臨死体験解釈
  今更ですが、立花隆氏が書いた「臨死体験」という本がベストセラーになりました。いつの時代の話をしてるんだというツッコミは置いときまして、未だに臨死体験が死後の世界の証明だと信じている人はたくさんいます。

 まず、臨死体験とは死に瀕した人が意識を回復したときに語る不思議な体験のことで、この体験の解釈については昔から大雑把に分けて二つの説があります。
 一つが、臨死体験は『死の間際に見た脳の幻覚である』という「脳内現象説」で、もう一つが臨死体験はあの世の証明であるとする「死後の世界実在説」です。ちなみに、漫画界では臨死体験に有力な説として、臨死体験=ドラえもんは夢だった説があるのですが、これはまた別の機会に。

 ●死後の世界実在説
 死後の世界実在説者は、臨死体験は死後の世界の証明であると主張しています。
 臨死体験は死後の世界の証明だと言う説を一般的にした人物として、エリザベス・キューブラー・ロスとレイモンド・ムーディーの二人があげられます。

  エリザベス・キューブラーは死者の魂とセックスできると信じているという危ないおばさんで、アメリカの精神科医なのだけど、むしろあなたが患者じゃないんですか?と問いたくなるような人です。
 彼女の臨死体験へのスタンスを知るために、前出の『臨死体験』に掲載されている立花氏が彼女にインタビューした際の逸話を見てみましょう。
キューブラー「プレアデス星団には宇宙人が住んでいて、『地球人は地球を破壊しすぎた。もう元には戻らないだろう。地球が再びきれいになる前に、何百万人もの人間が死ぬ必要がある』と言っていました」

 プレアデス星団とは、『すばる』という星で知られている、おうし座の一部です。地球からは400光年離れています。そんな遠いところの宇宙人をどうやって知ったのかというと、対外離脱して会ってきたそうです。これには、さすがに立花氏も困惑したらしく、これ以上の話は聞き出せませんでした。

 この電波キューブラーさんが臨死体験の世界で名を知られるようになったのは、『死ぬ瞬間』という、もう助かる見込みのない患者の声を集めた本を出版したからです。この本で彼女は一躍有名になりました。
 ただ、この本は正確には臨死体験の事例ではなくて、末期症状でもう助かる見込みの無い患者の声を集めただけです。厳密な意味で死ぬ瞬間の声を集めたわけではありません。

 本当の意味で死ぬ瞬間の声を集めたものとしては、日本の、しかも平安時代に書かれた、「二十五三昧根本結縁衆過去帳」という凄い本があります。
 二十五三昧根本結縁衆とは、当時の名僧が25人集まって、お互いに極楽浄土に行こうと誓い合った秘密結社のようなもの。
 この本は、彼らが死ぬ間際に遺した言葉を集めたもので、その方法は臨終直前に枕元に集まり、口に耳を近づけ、「今何が見えるか」と尋ね、その答えを克明に記すという滅茶苦茶なものですが、まあ平安時代ですから、今考えれば無茶な行為もできたんでしょう。

 体験内容ですが、ある者は「仏が見える」と言い、別の者は「煉獄が見える」といって死んでいったそうです。この本は最近流行の瀕死から生き返った人の臨死体験集と違い、本当に死に逝く人の言葉を集めたということで画期的だと思います。
 もっとも、これだって生きている時点の言葉しか聞けなかったのですから、本当に死後の世界を見たのかは分かりません。

 レイモンド・ムーディーはアメリカの医学博士ですが、彼自身は超心理学者だと呼ばれることを好むそうです。
 ムーディーは臨死体験の事例を事細かに集め、臨死体験において「典型的」と思われる、

「表現できない安らぎ」「天への上昇」「奇妙な音」「暗いトンネル」「肉体からの離脱」「光の存在」「生涯の回想」「生と死の境界」「肉体への生還」
 といった体験をリストにまとめました。
 冒頭に紹介した立花隆氏も、『臨死体験』の中で、よくある臨死体験パターンとして「三途の川を見た」「お花畑の中を歩いた」「魂が肉体から飛ぴ出した」「死んだ人に出会った」などを挙げています。ムーディーのリストによく似てますね

 もしも臨死体験がただの脳内現象なのだとしたら、こういった共通のパターンが見られるのはおかしいのではないか。というのが死後の世界実在説者の主張です。

 臨死体験を経験した人間がそれぞれが全く別個の体験をしているわけではないというのは事実です。しかし、 臨死体験を経験した人間全て同一の経験をしているわけではないのも事実です。そして、別個の体験の中で最も重要なのが「民族の差異」です。

 民族ごとの臨死体験の違いを言うと、キリスト教信者の臨死体験は光の存在(神の象徴)が高確率で出現するし、インド人の場合は日本でいう閻魔大王のような存在が出てきます。
 もし死後の世界が存在するならば、民族や宗教によって体験結果が違うのはおかしいはずです。それに、臨死体験を経験してあの世を見たと主張する人々が、何か新しい宗教を作ったり、一つの「正しい」宗教に入信したという話も聞きません。
 しかし、臨死体験=あの世説を取る人は、これに対する反論として、この世に様々な国があるようにあの世にも様々な国がある。または、これらの違った臨死体験の後に共通した死後の世界があると主張しているそうですが、それだったら結局死後の世界の証明になってないと思うのですが。

 ●脳内現象説
 臨死体験=脳内現象説は、臨死体験は死ぬ間際の人間が脳の作用によってみるただの幻覚の一種だという主張です。

 これに関して、1920〜1940年代にアメリカの脳神経学者ペンフィールドが行った興味深い実験があります。。
 今では倫理的に許されない実験なのですが、ペンフィールドはてんかん患者を治療するために頭蓋骨を切り開き、どこの部位を切除すれば機能が回復するかをテストしようとしました。無茶なことするオヤジですね。

 このとき、ペンフィールドは電気で側頭葉を刺激すると、患者が「自分の体が浮かび上がっているように感じる」などということに気がつきました。これを聞いて学術的興味深々のペンフィールドさん。「面白いオモチャを見つけた」とばかりに患者の脳をいじくりまくります。ぐりぐりぐりぐり。てんかんの治療はどうしたんでしょうか。

 まず、側頭葉のある部位を刺激すると、「浮遊体験」が感じられ、別の部位を刺激すると、「自分の魂が体から離れていっている」という感覚に襲われることが判明しました。もしかしたらこの患者だけなのかもしれないので、念のためとばかりにペンフィールドは、同様の実験を他の患者にも試し、脳をぐりぐりぐりぐり。同じような言動をすることを確認。
 また、側頭葉のシルヴィス溝を刺激された者の中には対外離脱だけではなく、神に逢ったと主張する者もいました
 そういえば、日本で「悪魔を祓うために体を清める」と称し、いとこを殺害して体を塩で清めたという悪魔祓い殺人事件では、側頭葉てんかんを持った男が「神の声を聴いた」と主張したのが始まりでした。側頭葉には神様が住んでいるのかもしれません。

 臨死体験=脳内現象説の理論はこれだけではありません。

 もしあなたが自転車に乗っていたら、ドカンと車にぶつかってみましょう。あなたの人生が一瞬にして早送りで再生されるはずです。そうです、走馬灯です。ちなみに、これは学校のテストにも応用できます。まずポケットに青酸カリを用意して、勉強したのに思い出せない問題が出たら一息に飲むのです。薄れ行く意識の中、あなたは今まで勉強したこと全てを思い出すでしょう。ただし、そのまま終焉を迎えても教授は知りません。

 この別名「映画フィルム式思考」と呼ばれる、死に直前で自分の一生が一瞬で思い出されるという体験は、クスリの服用でも体験できます。
 クスリの名前はセントロフェノキシンという、スマートドラッグとしてアメリカでかなり出回っている代物。これを服用すると、突然数十年前の思い出が鮮明に甦ってくることがあるのです。
 セントロフェノキシンはスマートドラッグなので服用しても合法ですが、あなたが彼女といるときに服用しない方がいいです。彼女とデート中に突然記憶が甦って、「この間は楽しかったね奈々」とでも呟こうなら、「奈々って誰よ!」と平手打ちが飛んでくること請け合いです?え?彼女なんかいないって?失礼しました。

 他には、LSDなどの麻薬で体験する幻覚には、長いトンネルの映像、まばゆい光、別世界の住人、生死を問わず様々な友人や家族が登場します。
 いくつかの薬物が臨死体験に酷似した幻覚を生み出すことは以前から指摘されていました。臨死体験が脳内物質や脳内現象による幻覚であると仮定するならば、それと同様の薬物を投与することで臨死体験と同様の体験ができ、そのメカニズムと解明されることになります。

 1980年の時点で既に、精神薬理学者のロナルド・シーゲルにより、臨死体験と薬物による幻覚の類似性が指摘され、亜酸化窒素やエーテル、ケタミン、フェンシクリジン(PCP)、ヘロインなどの薬物の名が挙げられています。

 さらに、オークランド大学のイェンセン教授は、「人間が死に瀕したとき、脳内の神経細胞を酸欠状態から防ぐために、エンドサイコシンという物質が大量に放出される。これが臨死体験を引き起こすのだろう」という説を発表した。この説はあくまでも仮説であり確証はありませんが、人間が極限状態に陥ると、脳内麻薬が発生することは昔から知られていました。死の直前というのは究極の極限状態ですから、脳内麻薬が大量に発生し、それが脳内に幻覚を生み出すのは十分に考えられます。

 大脳酸素欠乏症説というのもあります。
 肉体が危篤状態になったり、ほんの一瞬でも心臓が止まると、大脳の酸素が欠乏します。この大脳酸素欠乏は、短時間であっても重大な損害を脳に与えます。
 この大脳酸素欠乏状態に陥ったとき、最初に幸福感全能感がやってきて、さらに酸素欠乏が進むと現実判断能力が失われ幻覚が生じます
 日本の武道の場合、柔道の絞め技などで「おちる」瞬間は非常に気持ちいいと言われています。

 これらは、直接臨死体験=あの世を否定するわけではありませんが、人間の脳に刺激を与えたり、ドラッグを服用することで擬似的な臨死体験をすることができるのは事実です。


・ドラえもんは植物人間ののび太が見た夢だったという最終回は都市伝説です。
・擬似臨死体験は薬物で体験できます。
・臨死体験は死後の世界の証明にはなりません。
・しかし、死後の世界がないと決まったわけではないです。
・記憶力の悪い人には青酸カリが必需品です(責任は取りません)
・彼女といるときに走馬灯は見ないようにしましょう。
・臨死体験は脳内現象だとも(まだ)言い切れません。

 関連:臨死体験後の精神の変容

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